中国のジャイアントパンダ飼育員・監視員が特殊な職業であることは言うまでもないでしょう。
確かに日本を含む諸外国にもジャイアントパンダの飼育員はいらっしゃいます。また中国国内の一般的な動物園にいるパンダの飼育員は、外国の飼育員とあまり変わりないかもしれません。
しかしパンダ繁殖基地の飼育員は毎年数頭〜十数頭のパンダの出産・育児に立ち会います。また野生化訓練や野外導入に関わる人もいます。さらにパンダに会うかどうかわからないまま、数十年も自然保護区を巡回し続ける監視員も。そのような人たちは、外国にはいない特殊な職業といえるでしょう。
しかもその飼育員・監視員たちは「あまり理解されていない」というから驚きます。
今年は中国共産党成立100周年のため、中国パンダ保護研究センターの微信では「熊猫人」(直訳すると「パンダ人」、ジャイアントパンダの仕事人の意味)のストーリーを連載しています。その冒頭で次のように言います。
パンダ人とは、無数の崇拝と憧れを得ながらまだ一般には本当に理解されていない、平凡で偉大な職業です。
私は一昨年末から飼育員・監視員に関する記事を読んできました。その中でも中国のパンダ繁殖基地の飼育員は、繁殖・哺育期には「パンダが抱っこできていい」どころではない激務です。同時に通常期には掃除、餌やり、掃除、餌やり…と毎日同じことの繰り返し。野外導入の飼育員は雌パンダを探して数日間歩き回ることも。監視員に至っては、厳格な自然環境の中を歩き続けることに、家族の理解が得られなかったといいます。
中国でさえそうであるならば、外国である日本では言うに及ばないでしょう。しかし想像してみましょう。
日本を含む外国では、一人の飼育員はせいぜい一生のうちに一頭から数頭のパンダに関われるだけです。しかし中国の繁殖基地の飼育員は数十頭のパンダに関わります。そのおかげでパンダの個性に関する経験も豊かです。こんなパンダもいる、パンダにもこんなことがある、といういろいろなエピソードを読むのは本当に楽しい。また半野生環境にいるパンダに関わる飼育員は、飼育パンダとは比べ物にならないほど生き生きしたパンダを知っています。
私たちのほとんどは一生野生パンダの棲む環境に行くことはないし、野生パンダに会うこともないでしょう。中国の自然保護区の監視員には大卒で就職した方と地元出身で就職した方との二パターンがあります。しかしどちらも、野生パンダの棲む環境と野生パンダの習性について驚くほど熟知しています。
一人の飼育員を知ることは、関わった数十頭のパンダについて知ることです。また一人の監視員を知ることは、野生パンダの棲む世界について知ることです。
このような日本では知ることのできないパンダ飼育員・監視員の物語を、紹介していこうと思います。