このメルマガの基本的な立場
中国政府が推進している飼育パンダの野生化訓練と野外導入、そして生息地の回復と住民の生活支援を基本的に支持しています。しかし、飼育パンダを新たに外国に送ることには反対の立場を取っています。
中国の飼育パンダは次のような歴史があります。
1980年代まで、主に展示のために野生個体を次々に捕獲していました。
野生個体の捕獲が規制され、展示個体を維持するため飼育下の繁殖を試み、徐々に成功しました(1990年代〜)。
飼育パンダ数は若干増えましたが、遺伝的多様性の問題が生じました(2000年代〜)。
飼育パンダ個体群の遺伝的多様性を維持するために野外導入(雌の飼育パンダを野外で雄の野生パンダと交配させること)を、また野生個体群の遺伝的多様性を維持するために野生化訓練を経て野生復帰を実施しました(2010年代〜 ただし2023年現在、成功実績があるのは中国パンダ保護研究センターのみ)。
ジャイアントパンダには他の野生動物同様、国内外の展示ニーズに応えるため、野生個体が捕獲されてきた歴史があります。その捕獲が規制され、飼育下での繁殖を試みて成功しましたが、遺伝的多様性の問題が生じています。同時に、野生個体群の中でも構成員の数が少ないものには遺伝的多様性の問題があります。
飼育パンダの野外導入を行えば、飼育パンダ個体群の遺伝的多様性が改善されます。また飼育パンダの野生復帰を行えば、野生個体群の遺伝的多様性が改善されます。そのため、これらの方法には一定の合理性があります。
しかし、飼育パンダを新たに外国に送ることは、パンダ本来の生息地でパンダを保護するという文脈が失われるだけでなく、繁殖相手の要求が高いパンダにとってはストレスが大きいです。また、研究協力のためにはパンダではなく人が移動する方がよいと考えています。